サバサバ女漫画の広告があまりにも出てくるので二次創作百合にしました

本編読まずに広告だけ見た記憶で描いたので名前とか人間関係とかめちゃくちゃ

二次創作と言えるか? サバサバとキラキラ百合

 

ああ、またやっている。

居酒屋に入ってすぐ目に入ったのは、同部署のサバサバ先輩と、ひとりの男の姿だった。

私はキラキラ女。A社に派遣で入社し、最近正社員となる話が出た。ルックスは華やかかで、かつオフィスにふさわしい落ち着きもあり、若さを活かした飾り気のなさもある。髪の長さはセミロングで、コンサバティブなイヤリングをつけ、前髪は毎日コテでまとめている。都会で働く女性の標準像を描けと命令すれば、誰もが私の似顔絵を描くだろう。しかし私の容貌は、それなりに維持に労力が必要だ。「普通」への到達自体に困難を感じる人もいる。私の外見は、社会から求められる標準をこなす胆力が私にあることを、静かに物語っていた。

 私はその能力を自負しながら、そうならない人間が大勢いることを知っている。そのひとりが、先輩のサバサバ女だった。

 どうやらサバサバさんは、隣にいる男性に奢っているようだった。男性はサバサバさんを姐さんと呼んでいる。下心を向けられたと思い喜ばしいのか、財布から札を出しながら、サバサバさんの頬が赤く染まっていく。やばい。先輩のパーソナルなシーンを見てしまった。こんな覗き見は趣味が悪いのではないか。目線を横に移すと、男の顔には見覚えがあった。

 

……うわっ」

 

 Kだ。私と仲の良いFの同期のKだ、多分。Fから同期の愚痴を聞かされていた。散々、自分が女をいかにコントロールできるか、自慢話をするやつがいると。同じ会社の先輩もターゲットにしていると。

 この世には、愚かな女を馬鹿にしたいやつがうじゃうじゃいる。思うより先に、怒りで体が動いていた。

 

「サバサバさん、こんばんは」

「キラキラさん!?なんでこんなとこに

「こんばんは。サバサバさんの後輩の、キラキラと申します。」

「あっはい」

「たまたまなんですけど、明日提出の資料の

ミスを見つけて。よければ今確認できませんか?」

「ハァ!?今!?」

 

サバサバさんが明らかにいらついた表情を見せる。焦るな、大丈夫。彼女は断らない。特に年下の後輩の前では、面子を気にするはず。

 

「お願いです、サバサバさん。今、サバサバさんしか頼りになる人がいないんです。」

 

ここまで言うと、サバサバさんが照れたような表情をした。そしてKを一瞥し、まあしゃーねーな、後輩に良いとこ見せるか!とでも言うかのように、目を輝かせた。

 

「ごめん!ちょっと席外すわ!」

 

バシバシとかなり痛そうにKを叩きながら、サバサバさんは立ち上がってくれた。その慣れた手つきは演技じみていて、こんな風にさりげなくボディータッチするから男が放っとかないのよね、と物語っていた。

 Kから見えないであろう店の廊下に、ふたりで移動する。チッ、いいところだったのによ、とサバサバさんが小声で呟いたが、聞こえないフリをした。

 

「それでミスってなんなわけ?散々言ってるのに確認サボったの?」

「ミスなんてないですよ」

「は?」

「ミスなんてありません。私ほぼミスしないじゃないですか。あの席からサバサバさんを立たせたかったんです。」

 

サバサバさんはしばらく唖然としていたが、すぐに全ての真実を悟ったような表情で口を開いた。

 

「あんたまさか、私がモテてるの見て邪魔したの!?」

「はい邪魔しました」

「!?」

「あいつ知ってるんです。私の仲良い子と、あの男が同期で。サバサバさんのこと、影で良いカモだの、チョロいブスだの言ってます。」

「なっそんなわけ」

「信じるも信じないも自由ですけど。仲良いのってFですよ。彼女が嘘つくと思います?」

 

サバサバさんは焦りを隠せない表情となり、以下のようなモノローグが入った。

 

嘘?どういうこと?

だって私は100%

やれることを

やってきたわ

 

男は私みたいな

サバサバ系が好きで

私ってサバサバしてるから

なんだかんだ

ぶりっ子は

 

さん

 

「サバサバさん!」

 

私が大声を出すと、サバサバさんの焦点が定まった。

 

「大丈夫ですか?」

何よ」ぽろり

 

サバサバさんの目は潤んでいた。

 

「気にしないわよそんなの。たっく、口が悪いわよね。男ってやつはそういうの、スルーできるのが、大人の

 

サバサバさんが俯く。

私は、完全に感極まった時の攻めの顔になっていた。間髪入れず、サバサバさんに向かって壁ドンをした。

 

「サバサバさん、こっちを見てください。」

「!」

 

サバサバさんは、わかりやすく受けの顔になった。

 

「私は、仕事能力も外見も、それなりに仕上げてきました。しかしこのとおり、能力がありながら派遣入社です。女が受ける理不尽を、そのとおりに味わってきてます。」

 

私の自己紹介の羅列に、サバサバさんはハ?私はあんたより学歴もあるし仕事もできるしむしろあんたの社員登用イラついてるんだが?外見もあんたみたいな派手系より自然体を活かした私みたいなナチュラルメイクの方が人気に決まってるし?とでも言いたげだ。私は半笑いした。

 

「サバサバさんは女として生きるために、男ウケ理論を独学で学び、その手段がサバサバだったんでしょう?私もです。周囲が一番ムカつかない女が、コンサバでキラキラのあざとい量産型快活女でした。たまたま履修過程が違っただけです。サバサバはいつしかあなたのキャッチフレーズとなり、広告で毎日のように表示されるようになった。バカにしやすい女をバカにしたい人間の、サンドバッグに選ばれたんです。たとえサバサバさんのサバサバっぷりがやりすぎで愚かしくても、私は決してあなたを笑いません。どう考えてもおかしいのは、サバサバさんをサバサバたらしめた社会ーー女にとってヘテロ男ウケが生存手段であるかのように呼びかけ、家父長制に依存させた社会ーーそして男ウケやモテを市場化した資本主義です。いいですか。あなたはチョロいブスではなく、まっすぐな、美しい人です。」

 

「ねえサバサバさん」

「一緒に私たちを比べる土俵をぶち壊しましょう。」